こんな日に限ってイヤホン壊れた。
お風呂あがったら傷の確認させてくださいねって言われててピリピリするの我慢しながら指導通り傷も洗ったつもりで部屋に帰ってきていざ看護師さんに見せたら、傷上に人工的な瘡蓋の用途で貼られている白いテープを少し捲りながらいやに熱心にうーん……うーん……って見るから何が気になってるのか教えてくださいって訊いたところ、「ここの部分がじゅくじゅくとは違うけど青い…黄色い……何か……うーん……ちょっと先生と一緒に確認させてください」って一旦出て行った。
間も無く男性医師が入ってきて傷を確認しながら、「あー……うーん……確かに気になるけどそこまで……うーん……あー……。ちょっと剥がして洗ってみましょうか」って。
看護師さんが他の看護師さんに洗浄液やら器具やらを携帯で手配してパタパタとその３人目が２度ほど往復している間に私は、朝に飲んだきり飲み継ぎを忘れていたロキソニンを即効性もないのに処置前に飲ませてほしいと言って慌てて飲んだ。
ベッドがフラットな状態にされて高さを調整されて手術台みたいになった。
痛い。
しみる。
傷のないところに指が置かれているだけでそこが痛い。
痛い…………
一通り終わって白いテープを新しくして「これで一応大丈夫だとは思うけど、お風呂入ったら膿とかも流すつもりでしっかり傷口にお湯かけていいです。もっと洗っていいです、その方が治りも早くなりますからね」と言い残して医師は出て行き、処置中「深呼吸しましょう、そうです、うまいです、大丈夫ですよ、洗ってるだけですよ、痛くても抉ったりしてませんよ」って言ってた看護師さんは「お疲れ様でした……！これであとはゆっくり休んでくださいね」と言って出て行った。
風呂上がりに新しい腹帯がうまく巻けなくて手間取ってた時さっそく付着してしまった茶色い染みに、目を瞑らなければよかったんだろうか。
今日ほんとは外来階にあるスタバに行きたかった。
入院患者は外来時間中に外来階に降りてくる事は禁止されていて、でも昨日と今日は休日なので時間規制なく利用できるって聞いてたから。
昼間にパジャマ姿でスタバに居るのはエレベーターに乗ってるより面白い状況だろうなって想像してふふってなってた。
でももう動きたくない……。
それでも、身体の動かし方を間違えた瞬間まるでボタンを掛け違えている服を思いっきり引っ張るような裂かれるような激痛に一瞬で滴るほど汗だくになっても、それでも、手術当日の夜に全身麻酔から目覚めて両手両足に医療器具が装着されてて動かせないまま強烈な喉の渇きに耐えかねて訴えても翌日の朝９時まで水すら禁止されているからただひたすら、ひたすら、ひたすら、夜明けまで、その９時とやらになるまで、14時間ぐらい、真っ暗な中で、ああ砂漠で死にかけてる人ってこんな気持ちなのかな渇きってこんなにキツい事なのかどうして手術台で仮死状態にした時にそのまま殺してくれなかったの生きててもいい唯一の免罪符をまるごと剥奪されたゴミはちゃんと医療廃棄物にしてよこんな時間に目覚めるくらいなら翌日の朝まで昏睡するくらい強い麻酔を打ち続けてほしかったよそれができないならこんなにしてまで生き長らえさせずに患部じゃなくて首の方を切ってくれればよかったのにって、あの、あのひたすら地獄でしかなかった夜、あの真っ暗な14時間をひたすら渇きに朦朧としながら本当にただ呼吸をしているしかできなかったあの地獄に比べたら、こんなの。こんなのかすり傷だ。ぜんぜん痛くない。滴るほど汗だくになったって飲水が許されたあのとき看護師さんに「脱水になりかけてるから点滴を調整しますね」って、その時は両手の甲に点滴されてて水分補給されてたのにそれを打ち消すほどそんなに泣いたっけって高熱でぼんやりした頭で思い返したあの長い長い長い長い長い長い長い長い長い地獄の夜に比べたら。
なんにも痛くないし辛くない。
あの地獄だって今はもうちゃんと過去になった。
このフラッシュバックだってズキズキする腹の傷だってきっとちゃんと過去になってくれる。
使い古された言い回しに「明けない夜はない」なんて綺麗事めいた言葉があるけど、あれは本当だった。本当だからずっと使い古されてきてるんだろう。
粉々に砕かれた鏡の上にも新しい景色が映されるって千と千尋の神隠しでも歌われてた。
そういえば持ってきたウォークマンに入れていた曲が林原めぐみだったりseesawだったり石川智晶だったり最近だと藍井エイルの星が降るユメだったり、悉く自分が好んできた歌が今の自分を打ちのめすくらいに『生きる事に肯定的な曲』ばかりで、一昨日くらいだったかにああ深夜の病室で聴くラインナップじゃないわって、林原さんの「せっかく今を生きているのだから好きなこと楽しいことしなくちゃ 次の人生(アンコール)なんて待っていられない 精一杯の今に乾杯！ 自分が主役の人生(ドラマ)くらいは楽しまなくちゃもったいないわ 泣いて傷ついてそして立ち直って 演じてみせるわ終演(フィナーレ)まで」って中学生の頃から大好きなフレーズで涙腺崩壊して同室の人達に気付かれないように号泣してた。
昨日の夜にイヤホンが壊れちゃって聴けなくなっちゃったけど聴けなくなって良かったのかもしれない。
こんな私の存在だっていつか全部過去になる。
だから全部大丈夫だ。大丈夫、大丈夫、大丈夫…………
中学生ぶりくらいに自己コントロールに集中してたら気付いたら３時間も経ってる……お風呂あがったの15時半だったのに。まあいいや。
明日はスタバ行きたいな。
退院予定まであと３日
間も無く男性医師が入ってきて傷を確認しながら、「あー……うーん……確かに気になるけどそこまで……うーん……あー……。ちょっと剥がして洗ってみましょうか」って。
看護師さんが他の看護師さんに洗浄液やら器具やらを携帯で手配してパタパタとその３人目が２度ほど往復している間に私は、朝に飲んだきり飲み継ぎを忘れていたロキソニンを即効性もないのに処置前に飲ませてほしいと言って慌てて飲んだ。
ベッドがフラットな状態にされて高さを調整されて手術台みたいになった。
痛い。
しみる。
傷のないところに指が置かれているだけでそこが痛い。
痛い…………
一通り終わって白いテープを新しくして「これで一応大丈夫だとは思うけど、お風呂入ったら膿とかも流すつもりでしっかり傷口にお湯かけていいです。もっと洗っていいです、その方が治りも早くなりますからね」と言い残して医師は出て行き、処置中「深呼吸しましょう、そうです、うまいです、大丈夫ですよ、洗ってるだけですよ、痛くても抉ったりしてませんよ」って言ってた看護師さんは「お疲れ様でした……！これであとはゆっくり休んでくださいね」と言って出て行った。
風呂上がりに新しい腹帯がうまく巻けなくて手間取ってた時さっそく付着してしまった茶色い染みに、目を瞑らなければよかったんだろうか。
今日ほんとは外来階にあるスタバに行きたかった。
入院患者は外来時間中に外来階に降りてくる事は禁止されていて、でも昨日と今日は休日なので時間規制なく利用できるって聞いてたから。
昼間にパジャマ姿でスタバに居るのはエレベーターに乗ってるより面白い状況だろうなって想像してふふってなってた。
でももう動きたくない……。
それでも、身体の動かし方を間違えた瞬間まるでボタンを掛け違えている服を思いっきり引っ張るような裂かれるような激痛に一瞬で滴るほど汗だくになっても、それでも、手術当日の夜に全身麻酔から目覚めて両手両足に医療器具が装着されてて動かせないまま強烈な喉の渇きに耐えかねて訴えても翌日の朝９時まで水すら禁止されているからただひたすら、ひたすら、ひたすら、夜明けまで、その９時とやらになるまで、14時間ぐらい、真っ暗な中で、ああ砂漠で死にかけてる人ってこんな気持ちなのかな渇きってこんなにキツい事なのかどうして手術台で仮死状態にした時にそのまま殺してくれなかったの生きててもいい唯一の免罪符をまるごと剥奪されたゴミはちゃんと医療廃棄物にしてよこんな時間に目覚めるくらいなら翌日の朝まで昏睡するくらい強い麻酔を打ち続けてほしかったよそれができないならこんなにしてまで生き長らえさせずに患部じゃなくて首の方を切ってくれればよかったのにって、あの、あのひたすら地獄でしかなかった夜、あの真っ暗な14時間をひたすら渇きに朦朧としながら本当にただ呼吸をしているしかできなかったあの地獄に比べたら、こんなの。こんなのかすり傷だ。ぜんぜん痛くない。滴るほど汗だくになったって飲水が許されたあのとき看護師さんに「脱水になりかけてるから点滴を調整しますね」って、その時は両手の甲に点滴されてて水分補給されてたのにそれを打ち消すほどそんなに泣いたっけって高熱でぼんやりした頭で思い返したあの長い長い長い長い長い長い長い長い長い地獄の夜に比べたら。
なんにも痛くないし辛くない。
あの地獄だって今はもうちゃんと過去になった。
このフラッシュバックだってズキズキする腹の傷だってきっとちゃんと過去になってくれる。
使い古された言い回しに「明けない夜はない」なんて綺麗事めいた言葉があるけど、あれは本当だった。本当だからずっと使い古されてきてるんだろう。
粉々に砕かれた鏡の上にも新しい景色が映されるって千と千尋の神隠しでも歌われてた。
そういえば持ってきたウォークマンに入れていた曲が林原めぐみだったりseesawだったり石川智晶だったり最近だと藍井エイルの星が降るユメだったり、悉く自分が好んできた歌が今の自分を打ちのめすくらいに『生きる事に肯定的な曲』ばかりで、一昨日くらいだったかにああ深夜の病室で聴くラインナップじゃないわって、林原さんの「せっかく今を生きているのだから好きなこと楽しいことしなくちゃ 次の人生(アンコール)なんて待っていられない 精一杯の今に乾杯！ 自分が主役の人生(ドラマ)くらいは楽しまなくちゃもったいないわ 泣いて傷ついてそして立ち直って 演じてみせるわ終演(フィナーレ)まで」って中学生の頃から大好きなフレーズで涙腺崩壊して同室の人達に気付かれないように号泣してた。
昨日の夜にイヤホンが壊れちゃって聴けなくなっちゃったけど聴けなくなって良かったのかもしれない。
こんな私の存在だっていつか全部過去になる。
だから全部大丈夫だ。大丈夫、大丈夫、大丈夫…………
中学生ぶりくらいに自己コントロールに集中してたら気付いたら３時間も経ってる……お風呂あがったの15時半だったのに。まあいいや。
明日はスタバ行きたいな。
退院予定まであと３日